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<はじめに>
富山県で一番広大な面積を有するのは大山町であるが、大部分は山林地帯で占められている。黒部川源流域の奥深くにはその流れをとり囲むようにいくつもの山々がある。町の最高峰は水晶岳だがアルペンルートの高原バスのアナウンスガイドは北アルプスで最も美しい山「薬師岳」と讃えている。
そんな薬師岳の魅力にとりつかれて20年。今なお山歩きを続けているきっかけとなった山であり、いわば自分にとっての「原点の山」でもある。
<薬師岳の開山>
立山開山伝説はあまりにも有名であるが、この山にも伝説がある。 有峰にミサノ松という貧しい職人がいたそうな。山で昼寝をしていると「ミサノ松、ミサノ松」と呼ぶ声がして目を覚ました。すると目の前に金色に輝く薬師如来がおられ、その如来のあとを追っていくうちにいつの間にか高い山の頂上に登っていたそうな。ミサノ松はそこに祠を建てて薬師如来をおまつりしたそうな。 1,390年頃の開山由来である。古くから有峰村の人々にとっての信仰の対象であり、こころのふるさとであった。かつては女人禁制の山で、登拝に際しては沐浴し、塩で身を清め、途中の真川谷・太郎兵衛平・薬師岳の3カ所で禊ぎをし、頂上近くからは神の聖地を汚さぬよう裸足で参拝したという。
<薬師岳と文学>
明治から大正の頃より登山趣味が盛んになってくると、紀行文学も続々現れた。辻本満丸の「越中薬師岳及上ノ岳」や辻村太郎の「薬師岳登山記」がある。また、富山県生まれの田部重治には「薬師岳と有峰」「槍ヶ岳から日本海へ」がある。なお、太郎平小屋の看板は田部の揮毫によるものである。そして小島烏水の「日本アルプス縦断記」は槍ヶ岳にはじまって薬師岳に至り有峰に下っている。
その他、小説として注目されるのは中河与一の「天の夕顔」であろう。大多和峠には与一の作「夜ふかき山の庵に夢さめて空わたる月を消ゆるまで見し」の一首が刻まれた文学碑がある。この小説をめぐって、近年盗作等の問題が浮上している。
<おわりに>
我々はなぜ山に登るのか。マロリーの「山がそこにあるから」という言葉はあまりにも有名である。また、エベレスト初登頂のネパール人テンジンも「山に友情があり、山ほど人と人を結びつけるものはない」と言っている。深田久弥の「日本百名山」やNHKテレビの「山歩き講座」等で、今まさに登山人口は急増している。今夏、ここ薬師岳へも全国から大勢の登山者が訪れ、それぞれの感動を味わったことであろう。
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